田園に萌ゆ

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GA文庫串木野たんぼ『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』:酔っぱらいでも顔が良ければいいじゃないか

プイ! なつのです。(ミリしらで流行りに乗っかてくスタイル)


今回は『泥酔彼女』を紹介します。

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著:串木野たんぼ イラスト:加川壱互

姉の友達襲来! 距離感激近宅飲みラブコメ!

聖夜に近所の年上美人と二人で過ごすことになった。全男子にとって、夢のようなシチュだと思う。相手が泥酔一歩手前でさえなければだけど。
「弟ク~ン、おつまみま~だ~?」
ありえないほど顔がいいのに、それが霞むレベルのお気楽マイペースなダメ女・和泉七瀬。聖夜に俺と残念なかたちで出会ったこの人は、勝手に家に来るしやたら酒好きだし隙あらば弄り倒してくるし、とにかくひたすら面倒くさい。いくら顔がよくても、距離感バグってるタイプの近所のお姉さんって普通に悪夢だろ。
無自覚&無頓着。顔がいいくせに絶妙にガードが緩いハタチのダメ女に男子高校生が付き合わされまくる、酒ヒロイン特化型青春宅飲みラブコメ
(GA文庫公式サイトより)


 最近のラブコメ作品は関係性を捻ったものが多くて、例えば親友の妹だとか、元カノだとか、幼なじみの母親だとか、そういう少し特殊な間柄でのラブコメディというのが流行っています。『泥酔彼女』のヒロインも主人公からすると姉の友人という立場で、「特殊関係ラブコメ」に分類できるでしょう。(決して性癖とは言うまい)

 あらすじをみると顔面の良いアル中とイチャコラする話なのかな? って感じで、まぁ事実その通りではあるんですが、ただただ甘い世界が展開されるのかといえばそうではなく、主人公は主人公なりにアル中との向き合い方を考え、女友達はアル中からあわよくばと地位の簒奪を狙い、アル中はアル中なりに悩みを抱えて生きているわけです。まぁアル中は言いすぎですね。仮にアル中だとしても顔が良いので許されると思いますが。いや、許されるか? …………許す!

 酔っぱらいとのラブコメも重要な要素ですが、もうひとつこの作品にはテーマがあります。
それが演劇。キャラクターはみな演劇・芸能といった分野に惹かれ、そこに夢を見出した若者です。

 主人公の穂澄は脚本家志望で、酔っぱらいのご機嫌をとりつつ執筆に励む哀れな高校生。穂澄は過去に色々あって演劇からは距離を置いてますが、それでも日々脚本を書き溜めています。主夫レベルが高く酔っぱらいの相手もお茶の子さいさい……とはいきませんが奮闘してます。
 そんな穂澄の元へ、姉が飲み友を連れてくる。その人物こそアル中美人、七瀬です。七瀬は穂澄に懐き、穂澄もまた満更でもなさそうな態度で接します。というより、穂澄は七瀬を脚本のネタにしようと考えているのです。「こいつのヤバさ脚本に落とし込んだろ」と。七瀬にとっても穂澄との時間は居心地が良く、いつしか七瀬は穂澄の家に入り浸るように。
 そんな二人の関係性をよく思わないのが、穂澄の幼なじみである洋子。少しずつ積み重ねてきた想い、穂澄との関係をぽっと出の酔っぱらいなんかに奪われたくはありません。洋子は高校でも演劇を続け、反対に演劇とは距離を置いた穂澄を熱心に勧誘してきました。まぁ半分は口実で、穂澄と会う時間をつくる建前のようなものなんでしょうけど。
 もう一人重要な人物が登場しますがそれについては触れないことにします。いうなれば破壊神であり、爆弾でもあります。穂澄にとっては地雷。この人物がどう動くかで作品の方向性、ストーリーが大きく変わってきます。つまりネタバレなんだと思う。

 作中には色々伏線がまかれてます。あるいは今後の展開を示唆(ミスリード?)するような描写もありました。なんにせよ、まだ一巻です。最後の引きから続刊はほぼ前提だと思うので、今のうちに追いついておきましょう。

 
 
 それはそうと、最近のラノベ主人公はワナビみたいなやつが多い気がする。そうでなくとも何かしらクリエイティブな技能を身に着けていたり。これも流行りなんでしょうか。
「なろう」や「カクヨム」から書籍化を狙える時代ですし、作家という職業やそれを目指す道のりが読者にとっても受け入れやすいものになっているのかもしれませんね。


執筆:なつの